『ルナティックドーン』の新作が欲しい。
これは別に私だけが言っている話でもなく、「続編が出たら買うゲーム」「復活してほしいゲーム」といった話題になると、かなりの確率で名前が挙がるシリーズだ。
自由に冒険する。
善人になるのも悪人になるのも自由。
仲間を作る。
依頼をこなす。
犯罪者になる。
結婚する。
歳を取る。
自分だけの人生を送る。
今で言えばオープンワールドやサンドボックスRPGに近い考え方を、アートディンクはかなり昔からやっていた。
そして2026年現在も、アートディンクの公式サイトには『ルナティックドーン』が自社シリーズとして掲載されている。
「シナリオに束縛されずに思うがままに生き、世界を動かす。『自由な冒険』がテーマのRPG」
と、公式自身が説明している。
旧作についても『ルナティックドーン 前途への道標』などはアートディンクの公式ダウンロード販売で購入できる。つまり権利がどこかへ行ってしまったシリーズというわけでもなさそうだ。
それなのに、新作が出ない。
なぜなのか。
アートディンクに「作る技術がない」は絶対に違う
最初に思ったのが、
「もう昔のスタッフもいないし、ルナドンみたいなゲームを作れる会社じゃなくなったのでは?」
ということだった。
ところが現在のアートディンクの開発実績を見ると、そんな心配は完全に吹き飛ぶ。
アートディンクは、
『トライアングルストラテジー』
の開発を担当している。
さらに、
HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』
も開発担当。
公式の受託開発実績には、ほかにもスクウェア・エニックスやバンダイナムコなど大手各社のタイトルが並んでいる。
つまり、
ルナティックドーンを作れない会社になった
という話ではない。
むしろ、
ドラクエを任せられるほどゲーム開発能力のある会社が、ルナティックドーンを作っていない
のである。
ルナドン好きとしては、
「ドラクエ作れるならルナドン作ってくれよ!」
と言いたくなる。
A列車は今でもバリバリ現役
さらにアートディンクは、自社IPを全部放置しているわけでもない。
『A列車で行こう』シリーズは現在も完全に現役だ。
2025年には『A列車で行こう はじまる観光計画 Nintendo Switch 2 Edition』、2026年6月には『A列車で行こう9 Evolution』まで発売している。
だから、
「今は受託専門になったので自社ゲームなんて作りません」
という会社でもない。
売れる自社IPには今もきっちり投資している。
ここまで来ると、ルナティックドーンが止まっている理由はだいぶ絞られてくる気がする。
おそらく問題は「作れるか」ではなく「ペイするか」
ルナティックドーンって、見た目だけならそんなに制作費がかかりそうなゲームには見えない。
派手なムービーを何時間も作る必要もない。
超美麗なキャラクターを大量に用意する必要もない。
ところがゲームシステムを考えると、かなり厄介だ。
普通のRPGなら、
ストーリーA
↓
イベントB
↓
ボスC
という一本道を作れる。
でもルナドンではプレイヤーがその道を歩いてくれる保証がない。
町へ行く。
依頼を受ける。
依頼を無視する。
泥棒をする。
仲間を裏切る。
別の町へ行く。
結婚する。
そのまま何十年も生きる。
場合によっては悪人になる。
つまり、プレイヤーが好き勝手なことをしてもゲーム世界が破綻しない仕組みを作らなければならない。
NPC、町、依頼、人間関係、評判、犯罪、経済、仲間、成長、老化、世代交代。
こういうシステム同士が絡み合う。
ルナドンの本体はグラフィックではない。
世界シミュレーションそのものがゲームなのである。
これを現代基準で作り直し、UIも現代化し、膨大な行動パターンをデバッグする。
思ったよりかなり大変そうだ。
しかも、どれだけ売れるか分からない
ここが最大の問題なんじゃないだろうか。
ルナティックドーンは今でもファンの声が強い。
「新作が出たら買う」
という人もかなりいる。
ところが、
声が大きいことと、10万本売れることは別の話だ。
昔遊んでいた人がネット掲示板で、
「ルナドン復活しないかなあ」
と書く。
それは需要ではある。
でも実際に新作が8,000円で発売された時、その人全員が買うとは限らない。
一方、アートディンクには受託開発という仕事がある。
スクウェア・エニックスから、
「ドラクエを作ってください」
と言われる。
契約条件にもよるだろうが、自社で完全新作を一本賭けで作るより、受託の方が売上を予測しやすいのは想像できる。
つまり経営者からすると、
ルナティックドーン新作にスタッフを数年間投入する
のと、
大手メーカーから受注した大型作品を開発する
のを比較しなければならない。
ルナドンファンには悲しい話だが、会社経営として考えると、
「本当にルナドンの方が儲かるの?」
となる。
A列車との違いもそこなのでは?
『A列車で行こう』が現在まで続いている理由も、おそらくここにある。
A列車には、
新作が出れば買う固定客
がいる。
鉄道ゲームというジャンル自体に明確な需要があり、シリーズとして何十年も販売実績を積み上げている。
アートディンク側も、
「このくらいの製品を出せば、このくらいの客が買ってくれる」
という予測を立てやすいはずだ。
対してルナティックドーンは、長期間新作が出ていない。
昔のファンは多い。
でも現在の市場規模は分からない。
つまり、
人気がないから作らないというより、売上予測が難しすぎるから作りにくい
のではないだろうか。
ところが最近、ちょっと状況が変わってきた
ここで面白いニュースがある。
アートディンクは2025年から、
「ARTDINK GAME LOG」
というプロジェクトを始めている。
これは昔アートディンクが作ったゲームを、SwitchやSteam向けに復刻する企画だ。公式自身が「過去の名作タイトルを現在の技術・プラットフォームで蘇らせるプロジェクト」と説明している。
第一弾が、
『太陽のしっぽ』
そして2026年には、
『アクアノートの休日』
まで復活した。
いや待ってくれ。
太陽のしっぽを復活させるの?
アクアノートも?
じゃあ……
ルナティックドーンもやってくれよ!!
と思うのは私だけではないだろう。
しかもARTDINK GAME LOGの公式ページを見ると、2026年8月現在、タイトル一覧には**「Coming Soon」**の未発表枠まで残っている。
もちろん、それがルナティックドーンだという情報は一切ない。
でも少なくとも、
アートディンクは昔の自社IPを掘り起こすこと自体を始めている。
ここは数年前とはかなり状況が違う。
まず旧作復刻で市場調査する手もある
いきなり数億円かけて完全新作ルナティックドーンを作らなくてもいい。
例えばARTDINK GAME LOGで、
『ルナティックドーン 前途への道標』
あたりをSwitch・Steam向けに遊びやすく移植する。
価格は2,000~4,000円程度。
それが予想以上に売れたら、
「まだルナドンいけるじゃん」
という数字が出る。
そうなれば完全新作を企画する材料にもなる。
これはアートディンクにとっても、かなりリスクの小さい市場調査になると思う。
昔のPCゲームを現在のWindowsで無理矢理動かすより、Switchで寝転がりながらルナドンを遊びたい人は私を含めて結構いるんじゃないだろうか。
今ならむしろルナドン型ゲームは時代に合っている
皮肉なことに、ルナティックドーンがやろうとしていたことは、今のゲーム市場ではむしろ珍しくない。
オープンワールド。
サンドボックス。
ローグライト。
プロシージャル生成。
NPCシミュレーション。
プレイヤーが自分で物語を作るゲーム。
この辺の考え方は、現在のインディーゲームでは非常に人気がある。
つまりルナドンは、
時代遅れになったゲームというより、時代が一周して追いついてきたゲーム
とも言える。
グラフィックをAAA級にする必要はない。
むしろ2Dや軽い3Dでいいから、NPCや社会システムを徹底的に作り込む。
そんなルナティックドーンなら、Steamのインディーゲーム市場とも相性が良さそうに思える。
結論――アートディンクはルナドンを作れないんじゃない、たぶん作らない
調べれば調べるほど、
「アートディンクにルナティックドーンを作る能力がない」
という結論にはならなかった。
むしろ逆だ。
ドラクエIIIのHD-2Dリメイクを開発できる。
トライアングルストラテジーを作れる。
A列車を現在も育てている。
昔の自社ゲームまで復刻し始めた。
技術も会社も生きている。
ルナティックドーンの権利も公式シリーズとして残っている。
となると、おそらく最大の問題は、
「作ったら本当に開発費を回収できるのか?」
なのだと思う。
ファンとしては、
「絶対買うから作れ!」
と言いたい。
会社としては、
「その『絶対買う』って言ってる人、何万人いるんですか?」
と聞きたい。
たぶん、このすれ違いが20年以上続いている。
でもARTDINK GAME LOGが始まった今なら、少なくとも昔より可能性はある。
『太陽のしっぽ』が帰ってきた。
『アクアノートの休日』も帰ってきた。
だったら次は――
そろそろルナティックドーン、どうですか。アートディンクさん。
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