気がつけば、このブログをまともに更新するのもずいぶん久しぶりになってしまった。
昔は漫画だのゲームだのについて散々書いていたのだが、最近では漫画を読むこと自体が正直ちょっと面倒になっている。
そんな状態で、書店でかなりプッシュされていたので手に取ったのが藤丸先生の「レジスタ!」だった。
最初に断っておくと、設定そのものはかなり分かりやすい。
主人公は36歳の男性作詞家。過去の恋愛で傷ついた経験から、もう恋愛なんてしたくないと思っている。
ヒロインはスーパーでレジ打ちをしている女子高生。
しかもかわいくて爆乳。
身も蓋もない言い方をすれば、男の願望をそのまま形にしたような設定である。
ところが、読んでみると意外なほど先が気になる。
「恋をすると日常がちょっと変わる」の描写がうまい
物語の始まりは、主人公がいつも利用しているスーパー。
そこでレジの女の子が男に絡まれているところを主人公が助ける。
改めて彼女を見れば、ものすごく好みのタイプだった。
もう恋愛なんてする歳でもない。
今さら何をやっているんだ。
そう思いながらも、気になってしまう。
そして20歳くらいかと思っていたら、女子高生だった。
ここから主人公の日常が少しずつ変わっていく。
いつも行くスーパーのレジにかわいい女の子がいる。
なんとなく気になってしまう。
その子のいるレジへ並んでしまう。
自然に話すきっかけはないかと考える。
仕事帰りにスーパーへ寄ることが、少し楽しみになる。
今まではサンダルにジャージ、髪もぼさぼさのまま買い物に行っていたのに、急に身だしなみが気になってくる。
「スーパーに行くだけなのに俺は何をやっているんだ」
自分でもそう思いながら、それでも少し格好を整えて出掛けてしまう。
そして、せっかく行ったのに彼女がいないとちょっとがっかりする。
こういうところが、この漫画は実にうまい。
ものすごい事件が起きているわけではない。
恋をした人間の日常が、ほんの少しだけ変わっていく。
その「あるある」の積み重ねで読ませてしまうのである。
ラブコメで大切なのは「出会い」と「もしかして?」
ラブコメというものは、まず主人公がヒロインに惹かれる瞬間が大切だと思っている。
古い例で恐縮だが、「天空の城ラピュタ」では女の子が空から降ってくるし、「ウイングマン」でも突然かわいい女の子が主人公の前に現れる。
現実ではそんな都合のいいことはまず起こらない。
だからこそ漫画では、それを思い切りやればいい。
ボーイ・ミーツ・ガールの瞬間で読者をつかめなければ、その先まで読んでもらえない。
「レジスタ!」では、いつものスーパーという非常に日常的な場所に、その仕掛けを持ち込んでいる。
そしてもう一つ、ラブコメで読者が食いつく瞬間がある。
「あれ……もしかして向こうも主人公のことを気にしてる?」
と思わせる瞬間だ。
主人公がヒロインを知りたいのは当たり前である。
好きなのだから。
面白くなるのは、その逆が見えた時だ。
「タッチ」でも、最初は南は和也と仲が良く、達也のことなど相手にしていないように見える。
ところが読んでいるうちに、
「あれ? 南ってもしかして達也のこと……」
となる。
すると先を読みたくなる。
「レジスタ!」もこの辺りがうまい。
ヒロインは最初から主人公に惚れているわけではない。
ナンパされていたところを助けてもらった相手として、主人公の顔を覚えている。
そして、
「ちゃんとお礼を言いたい」
「でも今さら話しかけたら変かな」
「いや、お礼を言わない方が人として失礼では?」
と、彼女は彼女で悩んでいる。
主人公は恋愛感情から彼女を気にする。
ヒロインは礼儀や誠実さから主人公を気にする。
理由は違うのに、お互いがお互いを意識し始める。
この距離感がいい。
見た目は男の妄想。でも中身は意外と真面目
ヒロインのデザインは、かなり分かりやすい。
かわいい女子高生で爆乳。
男性向け漫画としては実に正直である。
ところが性格まで主人公に都合よく作られているわけではない。
イケメンから告白されても、自分が好きではないからと断る。
将来についても彼女なりに考え、悩んでいる。
恋愛経験も豊富ではなく、恋愛とはどうすればいいのか本人にもよく分からない。
対する主人公は、恋愛を経験した結果、もう恋愛なんてしたくないと思っている。
「恋愛をしたくない男」と「恋愛の仕方が分からない女の子」。
この二人が、いろいろな出来事を経て少しずつ距離を縮めていく。
まあ、ここまで来ると今後の展開はある程度想像できる。
それはラブコメの宿命でもある。
むしろ重要なのは、その予想できる道筋をどれだけ楽しく読ませるかだと思う。
一般誌初連載とは思えない安定感
作者の藤丸先生は、成人向け漫画などで長く活動してきた漫画家で、「レジスタ!」が一般誌での初連載になるという。
新人が突然出てきた作品というより、長年漫画を描いてきた人が一般誌へ出てきた作品、と考えた方が近い。
そのせいなのか、1巻はかなり手堅く作られている。
奇抜な世界観があるわけでもない。
異世界へ飛ばされるわけでもない。
世界を救うわけでもない。
仕事帰りにスーパーへ行って、レジの女の子が気になる。
たったそれだけの話を、ちゃんと次のページへ読ませる。
これは簡単そうでなかなかできない。
書店でかなり平積みされていたし、サンデーうぇぶりでも積極的に展開されている。
出版社側もかなり力を入れている作品なのだろう。
実際、1巻を読めば「これはプッシュしたくなるな」というのは分かる。
最近は漫画を読むことそのものが少々面倒になっていた自分でも、1巻はそれなりの勢いで最後まで読んでしまった。
少なくとも「次を読ませる力」はある漫画だった。
……もっとも、2巻まで読むと少し印象が変わってくる。
その話は長くなりそうなので、また別の記事にしようと思う。
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